18 Dec 2015

初冬の尾根で犬と 1





十二月に入ったら犬と一緒に此処を登ろうと考えていた





だからといって その日が来たならいつでも出掛けられる準備が整っていたのかといえば
それはまた例のごとく 一切なにも出来ていなかった



昼にはその目的のつけ根を登り始めたかったんだが

しかし これもまた例のごとく その希望は大きく裏切られる事になる
なにせ肝心のその尾根の取り付きに辿り着いた時には
もう既に午後の一時を二十分かそこらは過ぎていたんだからね

あらあためて言う事ではないんだけど 準備は出かける朝にするもんじゃあないよね ホントに



いま時分の日暮れは大体四時半くらいだ
だから ようやく上りくちに立った犬とワタシに残された猶予は 
残すところ三時間ほどだった

少し気が急いたけど
それでも "暗くなるまでには着くよな" と なるたけ冷静に犬に向かって話しかけるも 
犬はそんな事は知ったことじゃないから 実のところ それは自分に言い聞かせてるようなもんだった



なるべく高い所まで行きたかった
願わくば両隣の尾根越に向こう側が少しだけでも覗き見る事が出来る
そんな高さのところまでね

だから残すところ約三時間程しかなったから 檜の暗い森を黙々と登った
--- ホントは荷物が重くて思うようには登れなかった ---



その北斜の角度のキツイ尾根にはジグザグの踏み跡がある
とても幅の狭いつづらで 右を向いたり左を向いたりと忙しい
いっそつづらで無くてもいいよと思えるくらいに小刻みなつづらなんだが
やっぱりそれはつづらであってくれた方が良いのだろう
--- 無ければそんな文句も出ないけど 踏み跡があるだけマシか ---
まあどちらにしても結構な角度なのだよ

そんな折り返し道が面倒な犬は 時に直線的に ワタシを置いて強引に登って行ってしまうから
ワタシは 正直心細いのと 犬が在らぬ方向へ行かないかと心配でまめに呼び戻すんだが
アレは一向に戻る素振りさえも見せないどころか 遠くで一瞬立ち止まるとチラリと振り返えり
またグングン行ってしまうときてる

だから何度も癇癪を起こした

暗い檜の森で足を止め ゼイゼイと呼吸を整える間に 大声で犬を呼ぶ所を想像してみて欲しい
くどい様だけど 犬は一向に戻ってこないんだよ 何度呼ばってもね 
ゼイゼイでハアハアでいっぱいいっぱいなのに 今はうんと酸素を必要としいるワタシが大声を張り上げているのにね
振り返って見てるんだ ちらっと "まだ大丈夫だな" って風な目で 悔しいよね



暗黒の森は突如として終わる

か細いけれど檜はブナと入れ替わって
一転明るく風通しの良い 丸みのある尾根に変わる

と同時に "ここらで良いんだけどな" と犬に、、、

しかし一向に平らなところが見つからない

日暮れまではまだあるが
出来れば直ぐにでも荷を降ろして寝床を確保したかった 実はそれくらい疲れていた
歩けと言われれば歩けたが 幸いにして "歩け" という奴は居なかったし
特に "何処何処まで行かなければ" という強迫観念めいたものも無かったから
だから 一刻もはやく平らな場所を見つけ 背負っている物を投げ出して横になりたかった
続きは全部明日でいいんだからと






























ここでいい ここらでいいからという願いが叶ったのか
それほど行かない間に適当な場所が見つかった


犬は何時ものように峪側に座って そうやって暫く遠くを見つめる儀式にとりかかる

何をしているのかは不明だけど
とにかくそうしている間は とても穏やかで落着いている
しかしこの儀式が終わると 手当たり次第に枯れ枝を齧りたおし破壊にかかる
そしてそれが穴を掘りに移ると いよいよクライマックスだ

狭いテントへ一緒に入って寝るのだから ドロだらけになるのは止して欲しいが
もはやそれを止める術は無い 此方はアレの電池が切れるのを大人しく待つしかない




実は米を忘れた それと犬のごはんも忘れた

晩御飯は 野菜と肉を適当にポットへ放り込んだ鍋と
鍋後にその汁で炊きたての飯をかっこむつもりだった
でも米を忘れたので 鍋〆ラーメンなる最近我が家で流行の細くて硬いラーメンにした

では 犬の飯はどうしたか、、、

彼女には丁重に侘びを入れた 何度も
そしてほぼ全ての肉を差し出すという条件で この不祥事をちゃらにしてもらう事で合意した
それと 付帯条件として プラス朝飯用のライ麦パン一切れが加わった



山の夜は早い
登り始めには もう後三時間しかないといっていた時間が 飯を食い終わった今はそれが無限にある
なので 先ずは星でも眺めようかと 空を見上げたが星は見えなかった
それならと 小さなブッシュストーブを燃やして暫く間暇つぶしでもと擱きをつつき返すが
一旦収束しかかったストーブはなかなか復活しない
おまけに 前日の雨で濡れた枝の管理が面倒で 気を抜くと直ぐに燻り始める始末
こうなるとのんびり所か逆に忙しなくて落着かない
、、、、、、だから寝ることにした

しかし 寝入ったのが早すぎた

夜中にぱっちり目と覚める
目覚めたついでに用足しに出る
すると外は濃い霧で 直ぐ近くのブナ以外なにも見えなかった

テントに戻り 小腹がすいたので
犬とサラミを分け合いながらウィスキーを飲んだ
多分二時か三時かとにかくそんな時間まで一方的に話かけながら眠くなるのを待った

2015/12/15 初冬の尾根で犬と、、、2へつづく

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