2024/09/07

山ノ神


今月は まだ一度しか釣に行っていない


お盆だなんだとバタバタしていたのもあり
あっという間に八月も末が近くになった

今度の休みは三日あるが
色々と用事がある
おまけにお天気だって危うい感じなのであった

そうこうしている間に八月最後の休日がやってきた
一日目はぱっとしない予報だったこともあり全く目覚めず
二日目も危うく無駄にするところだったが
あくる日は予定があるので釣に行くならもうこの日しかない
とにかくあれこれ考えていても始まらないので
昼も近くになってから近所の谿へと出かけることにした


車止めまで行くとバイクが一台止まっていた
それに乗ってきた人がさかな釣りだとは限らないけれど
こんなに酷い暑さの中 その誰かの後を追って林道を歩くのは体に毒だ
ここは大人しくカミ手へ向かうのはよしたほうが身のためと
少し下って山ノ神の辺りに車を寄せた

それにしても暑くて 車を降りるのも躊躇われた
だけれども ここで陽が傾くまで車内に籠って居る訳にもいかない
なので握り飯を一つ食べてから覚悟を決めて車から這い出す

未だ午後の一時かそこらで おてんとう様は当に真上にいる
これじゃあ無理かなと思い車内に戻ろうかしらと考えたが
如何にか思いとどまり荷室のゲートを開く

林道工事のダンプが二台三台と通り過ぎるのを見送りながら
かったるそうにゲートルを巻き沢靴を履いた
可成りノロノロした動作で支度をしたんだけれど
やはりお天道様は少しも傾いてはくれなかった

身形も整ったので 棹を抱え 空っぽに近いルックサックを背負い
水なんて流れてないんじゃないかと思える眩しい河原へ降りた
と同時に河鹿蛙が細く流れる分流へと飛び込む
それを見て何故かちょっと安心する



日陰に入って仕掛けを結んでいるとシモ手からいぬの吠声が聞こえた
なんどもなんども吠えている
どうしたのかしらと堰堤の際まで行って下を覗いてみると
彼のご主人様がフローターか何かを流れへと投げ込んでいた
何度も何度も、、、実に楽しそうだった

うちのいぬもここが好きだ
というよりワタシがここへいぬを連れて来るのが好きだと言う方が正しい
いずれにしてもいぬが元気な頃の話である


この暑さでは釣れないだろうなと思いながら毛鉤を振り込むと
意に反して、、反応があった
そう思い込みは良くないのだ
その後も二回三回と毛鉤を追うヤマメが居たが掛かりはしなかった

酷い渇水ではなかったけれど
いつもの如くこの沢の流れには毛鉤を流すべきところはあまりない
(これも思い込み さらに勝手な決めつけ なのかもしれない)
それなのに何度かあった好機をみすみす逃したのである
当に運の尽きとも言ってよい失態だった


いぬは体調がすぐれない
なのでこの日もお供が居ない
あのいぬが居ないと釣り遡るのも早い
叱ったり諭したりする手間が無いからだ
そなこんなであっという間に一区切りの堰堤まで辿り着いてしまった
あっけなくそこまで来てみてふと思った
あのやっかいな手間(いぬとのやりとり)が良い間になっていたんだなぁと
運の尽きの次は お供の必要性を痛感させられたのであった

結局 負の思い込みや お供の不在も祟り
さかなは釣れなかった


トボトボと引き返すと
さっきまで楽しそうに遊んでいたいぬらの姿は無く
当然だけど嬉しそうに吠える声も聞こえなかった
彼らがいつ帰ったのかは知るよしもないが
間違いなくそれなりに時間は経っている筈だ
なもんで モノは試しとシモ手の長い瀬へと向った

一旦林道にあがり
大きな堰堤を跨いだあたりでまた河原へと降りるのだが
その途中に山ノ神を祀ってある祠がある
ここは 前にも ”一匹くらい釣らせてください” とお願いしたら
本当に釣れた事があった それも一度ではない 二度も

だけど今回は流石にダメだろうという思いもあり
”一匹くらい釣らせてよ” と可成り無礼な口調で
しかも 立ち止まりもせず さらには帽子も取らずに呟きながら通り過ぎる

シモ手の河原に降りると
陽も大分傾いたのか心もち気温が下がった様に感じた

果たしてヤマメは釣れた
それも さっきまでいぬがわんわんジャブジャブ遊んでいた瀬から
まるで絵に描いたようにヤマメが飛び出してきたのだ
これは 半ば、、いや完全に諦めていただけに正直に嬉しかった

神頼みも三度続くとなると信じざるをえない
そう 信じる者だけが救われるのです
 ふらい麻呂

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