2022/10/04

秋の釣旅


 ヒメシャラが美しい尾根に乗ればこっちのもの、、




彼が言うには

以前に降りた谿へ向かう側とは逆に向かって

いくらか登り返したら笹の藪を漕いで降ればどうってことないです、、という話だっんです

確かに此方も 地形図上ではそうかなぐらいに思っていたのですが

実際そこへ行ってみるとそうでもなくて

午後には糸を垂れて足を冷やせるだろうという目論見は

早々と いとも簡単に潰えてしまったというわけです

まあこれはいつものことですが、、、



そもそもこの尾根には道があるという話だったんですが

(毎回道はあると言われるが実際はそんなものはあった試しが無い)

そこには道などはなく

幸いにも上が開けて明るい、、

それだけが救いの 深い笹に覆われた藪尾根がどこまでも続くのでありました

ただね これが道ですよと言われればそうなのかも知れないくらいの筋があるにはありました

しかし ワタシはもう少し優しい藪山を愛でて久しいのです

だからこの辺の方々がこれを道と呼ぶことには些かの抵抗があります



藪に横たわる大木は 越えるのが億劫なくらいであとはどうって事はないのですが

肩までもある笹の中に横たわっている枝やら何やらには本当にイライラさせられます

罠に躓く度に余計に体力を削られ さらに傾いた体を立て直すことでまた削られ、、、

やっと立ち直ったかと思うと

遠くまで続く尽きない藪がまた見えて、、、気力も尽き果ててしまうんじゃないかと思うのですよ



まあ計画の段階であれこれ話ていた事と実際の状況が少しくらい違うことはいくらでもありますので

ここまで突っ込んできてしまった以上つべこべ言っても始まりません

あとは何も考えず(考えたところで進みませんので)

例え何が出てこようとも 下降しはじめた尾根の先に見えそして消え入る谿を目指すだけです




二日目

朝に晩の残り飯を頬張りながら

口から出る言葉は ”昨日はまったく酷い目に遭わされた” 云々かんぬん

さらに濡れたシャツやゲーターを身につけながら文句たらたら、、

それでも ようやく釣りができるという事だけでなんと身のこなしの軽い事か

普通にうちの布団で目覚めていたなら

きっと身動きできぬくらいに体が強張っていて階段を上がるにも不自由したであろうに

固い地面で寝て起きていながらこの身のこなしはまったくもって不思議なものです




アプローチがどれほど長いといえども

大体どこへ入るにしても一日通して歩けばたどり着くことができるかと思います

確かに一日では辿り着かない様な場所もありますが

そういう場所はなるべくそっとしておくのが良いと思います

運よく辿り着けた場合は誰にも言わずにおきましょう

そして ”ああいいところだったなぁ” と無事に戻った後に何遍も思い返すのです

仮に誰かに話すにしても自慢話は釣果だけにしておくんです

計画の詳細と余計な武勇伝は禁物です

さもないと 気がついた時には其処は跡形もなく荒らされてしまうでしょう

そういうのが嫌なら黙ってニヤニヤして過ごす事です



今回の谿は一日歩けばどうにかなるところにあるのですが

かと言って最初から ”一日中歩くことになるよ” とそう言われたら二の足を踏んだでしょう

それが仮に四日も五日も旅程が取れるのであればまた別の話となるですが

生憎 長くても三日かそこらの行程を確保するのが限度です

そこへきて一日歩きだと言われると一日だけの釣りの為に二日も歩くハメになります

もちろん一日釣れれば沢山なんですが

心情的には三日あるなら内1.5日は釣りたいと思い願うのが普通です

(これについては 思えば通ずることもあれば成らぬこともあるのです)

でも彼は はなっからそれを承知の上で午後からは釣りになりますと励ましてくれます

良い嘘というものがあればこれがそれなんでしょうね

(事後には愉しい思い出となるのですが それが仇となりいつも同じことの繰り返し)




とにかくこの日は釣遡って上の幕場へ向かうだけ

もちろん悪場はないという事でした

なので当然ですが

平穏という言葉とおり平らで幸せな流れがいつまでも続くんだとそう思い込んでいましたが

時々小さな淵や小滝が現れます

どれも難しくはないんですが

根が釣人ですので首まで何てのはもってのほかで

ヘソまで濡れることすら真っ平です

しかし深みに入れば越えられるのであればそうしましょうかと

然れば落ちる事もなく登るよりはうんと楽(マシ)となりますからね




この時誰もが薄々気づいていたとは思いますが

誰も口には出さなかったんです

このまま釣りながら遡行し続けたのでは日が暮れるだろうといことを


なので高巻きか水線かで一悶着あったあとすぐにそうする事にしたんです

棹やカメラを仕舞って次の幕場まで愉しく遡行することにしようと


実際にはふた晩続けて薄暗くなってから幕を張るのが嫌だっただけなんですが

結果的にそれでよかったなと思ってます

勿論 深みを越えるたびに此処に毛鉤を浮かべて流したいと考えました

でもね 此処までで十分だったんですよ

それに 今夕くらいのんびりしいと心の底から願っていたんです



終わってみれば三日間雨にも降られず良い天気でした

蛭にあちこち喰われて血だらけにはなりましたが

これも計画倒れ同様いつも通り毎度のことです

やはり終えてみれば全て愉し

毎年恒例 夏のFREELIGHT合同山行 無事終了です


夏に遠くの谿にて

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