2021/06/01

試し釣り


アウトドアストアですが僅かに釣具も扱っています
そんな雑貨屋風アウトドアストアの店主らしく新しい棹と足袋を携え釣りに行ってきました


近所の雑木林は
天下の号令の下 皆が息を殺して篭っている間に
新緑の爽やかな季節などはあっという間に終わり
五月も始まったばかりだというのに
葉っぱはすっかり色濃く
そして夏のようにもさもさだ


そんな かろうじて残った丘陵地の雑木林脇を通り抜け
わりと早くに大川を渡って高速の入り口へと向かうのです

いぬの散歩を終えた頃にはすっかり陽も高くなり
さかなつりに行くにはかなり遅い時間となりましたが
それでもワタシにはかなりの早出と言えます
なんと言ってもまだ午前中ですから

料金所のゲートを潜ってぐるりと回りこみ本線へと繰り出した時
いつも”都心へ向かう衆らとは逆の方を向いてる” という事に格段の幸せを感じます

進むにつれ点々としていた緑地はやがて線状につらなり
そして ついには見渡す限りの森へと変わて行きます
この光景は何遍も何遍も 何遍も見ていて
それは本当に見慣れたいつもの光景なんですが
それでも いつでも順を追ってその景色を確認するのが愉しみでなりません


ルームミラーで十秒おきくらいに後方を確認しながらしばらく走り続けると
ついには要塞の様な山塊を突き抜ける長い隧道に入ります
そしてそこを抜けたところで街道へと降りるんですが
そこいらは右も左も果樹園だらけです
春先などは
ここいらの桃の花が咲くところや葡萄の蔓が伸びるのを確かめに来ている様なもので
さかな釣りなんてのは二の次です
(これは ”釣れなかった”  事態に陥った場合にそれを取り繕う言い訳)

それにしても
雑木同様 果樹が花をつけたり葉を伸ばしたりするのを眺めるは良いものですね
花がついていくらか経つと 今度は剪定作業が盛りを迎えます
そしてその枝葉を燃す煙が辺り一面を覆ってまるで煙幕をはったように真っ白になるんですが
それは一連の花の季節が終わり 山菜も姿を消し 謂わば春先の愉しみが終る合図みたいなもんです
でも愉しみは尽きたりはしません ちょっと経てばトウモロコシが路肩の直売所に山のように積まれ始めます
それはハウス栽培のさくらんぼが出始める直前でしょうか
そうやって次から次へと目的の産物が現れるのです

同時にヤマメの頃は一段落して季節はいわな釣へと移ります
待ったなしで進むんですね ちょっとくらいは待って欲しいものですが、、、


いつも出だしが遅いので 何処かで必ず車の長い列に捕まる事となりますが
おかげで通りっぱたの畑を眺めたり 直売棚の野菜を品定めをしたりと色々愉しめます

先日もいつもと同じ様に
ちょっと高い所にある道から果樹園を見下ろしつつ通勤の車列に並びノロノロと車を走らせていました
急がないと誰かに先を越されるやも知れない、、てな事がこれもまたいつも通りに頭をよぎります
しかし その辺りでいつも十時になろうかといった時間なのです
ですので今更多少の遅れは、、、(いつものことなので)気になりません
いや全く気にならないというのは嘘になりますかね

そんなこんなでようやく町外れにある最後の商店まで、、、

その店の角を左に曲がるんですが
すると五メートルも進まない間に道幅が一間か一間半くらいになるんですね
まあ実際には3、4メーターくらいはあるんでしょうけど
ただほんとに狭くていつだって左の用水に落ちるんじゃないかとハラハラします

そして そのやたらと圧迫感のある道は直ぐにつづら折れになり一気に標高を上げはじめるのです


つづら折れを上がりきると
そこは既に人っ子一人暮らしてはいまいと思われるくらいの山深さなんですが
そう思った頃に最後の集落が忽然と現れます
そこは本当に小さな集落でノロノロと走っていてもあっという間に通り過ぎてしまいます
そうして今度こそひと気が消え失せると、、、そこらが車止です

高い山の木はどれも葉が黄緑色で
ミズナラもサワグルミも幼葉がのび始めたばかりと一目で分かります
なので 分厚い森だというのに向こうが透けていて あたり一面明るく見えるんですね
これが真夏になるとそれはそれは鬱蒼として 谿沢のほとんどがやたらとうすら暗くなるから困ったものです
--- 鉤に糸が通らないとか うすら寒いとか なんか薄気味悪いとか 色々困ります ---
でもこの時期に限っては何処にいても明るいので諸々安心です
とにかく のんびりとした平穏な気分に浸れるのはこの短い時期だけなんですね
盛期にはうんと人も繰り出してくるし 毒虫も増えるし 薄気味悪いし、、と落ち着きません
そういった意味でも今時分が一番良い季節かもしれません


車止めには終わりかけの山桜が咲いていました

急坂を唸りながら上ってきた車を降りると
かなり肌寒く一瞬 ”早すぎたかな” と少し不安を感じましたが
ここ数週間の事を思えば おそらく昼頃には夏の様な陽気になる筈です

となれば さっさと新調した(冒頭の写真にある)先割れ足袋を履き
通い慣れた杣道を下って美しい白い谿へ降りましょうとなるのです

そういえば渓流釣りを始めた頃は沢靴といえばだいたい先割れでした

もっとも”わたしはフライフィッシングをしております”なんていう高尚な方々は
ラッセルだとかダナーだとか そういった先の割れてない堅牢な革靴を履いていましたが
ワタシの様なフナやタナゴくらいしか釣った事がなかった者には
そういう物が存在する事はもちろん 名前を聞いても何であるのかすら理解できませんでした
まあ 今となってはそんな事はどうでもいいんですがね

とにかく ここへ来て 久しぶりに先の割れた足袋を履こうと思ったのです
その動機というのは色々あるんですが
色々試して結局は最初に戻るみたいな そんなようなものでしょうか

なんでもそうですが 近頃ありとあらゆる道具が高価になりすぎました
それが一番の理由かもしれません
こういった簡素な足袋は最新鋭の靴よりは遥かに廉価ですから
シーズン中に靴を壊したとしてもためらうことなく新調できますし
二足買っても一足分よりも安いとなれば これはもう選ばない理由はありません
まあ 早い話が貧乏なだけなんですけどね


で 先割れ足袋の塩梅はというと

このゴム底の足袋は靴底が薄い事を除けばなんの不満も感じませんでした
その薄い靴底にしても 唯一不満を覚えるのはアプローチの時くらいなもので
それとて 仮に谿沢までの道中が長い時には靴を履き替えれば済む話です
ワタシは履き替えた靴を背負ってさかな釣りをする事になんら苦痛も感じませんから
これはもう取るに足らない事と言っても良いでしょう

余談ですが
薄い靴底がどうしても嫌ならフェルトの足袋を選ぶという手もありますね
フェルトの靴底はゴム底靴に比べると厚みがあるのでちょっとはマシでしょうから
難点と言えば 落ち葉や泥の斜面ですべることでしょうか
それにしたって ちょっと気をつければどうってことはないはずです
だって ちょっと前まではフェルトしかなかったんですから


この日のさかな釣りはと云うと

近年すっかり荒れ果てた感を漂わせていたこの谿ですが
昔からの居着きのいわなが姿を消してしまった事と
あまごがすっかり消えてしまった事を除けばわりと良い一日でした
大きないわなに中くらいのいわな
それに小さなのもポツポツと満遍なく揃っていたと云うのは実に明るい状況です
くどい様ですが 唯一あまごの姿が見当たらなかったのが本当に残念でしたが、、、。


そうそう棹のことを忘れていました

単刀直入に いい棹だと思いました
これは4本継でとても軽くて癖がなく扱いやすいのです
そして安い、、、

他に言うことないのかと言われそうですが
正直な話 あんまり棹の調子とかは気にしないので
それしか無いんです

安くて扱いやすいのは良いことですよ
特にこれから釣りを始めようと思っている そこの貴方にそっちの貴女、、

どうせそのうち色々欲しくなって
両手の指じゃ数えきれなくなるくらい買うんですから
まずはこれくらいのを買って思う存分試してみてはいかがでしょう?

店の片隅で細々と釣り具を売ってます
こんな店主でよければ商店再開の折は一声お掛けいただければ幸いです

ふらい麻呂

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