この夏の釣はというと、、、
ついには望んだ谿沢で棹を出す事さえままならない
そんな事が続いた ような、、、
そんな夏ではあったが
本格的な夏の盛りが来る少し前には幸せな時節もあったは、、あったのです
すこしだけ傷んだ桃が山積みになっている棚を道々探すのが楽しみだった
それを見つけると やにわに路肩へ車を停め
誰かに先を越されるかもしれない、、、、そんなのはお構いなしに
どれにしようかと熟れた桃を暫く眺め
何枚かの百円玉を備え付けの箱に一枚ずつ投入し
これと決めた一山をニヤニヤしながらさらう
そうしてから 大きなやまめが泳ぐかのように悠然と山里の最奥の沢へと向うのだ
そして長雨が終わり暑い夏が来ると 我先に、、と つり人も涌いて出てきた
そうなると 何時もより1時間半くらいの早起きでは到底太刀打ちできるわけもなく
何時もだれかの後塵を浴び続けることとなる
それでも 幾度もの空振りを繰り返しながらも
懲りもせずにいつもの谿へと通うのだ
今日もまた
眺めの良い鉢巻道路 --- 広域農道 --- を走る頃にはすっかり陽も高くなり
さて急がないと さもないと ”最後の集落を抜ける前に昼をすぎるぞ” と
何時もこの辺りでそう思う あぁまただと、、
当たり前だけど 急ぎたいのはやまやまなのである
だけど ここらへ来たなら --- この季節には --- なにはともあれ葡萄を買う
いや 買わねばならない
例え急いでいても --- 事実急いでいる --- 釣り終えた頃には農園(店)には誰もいないから
何処であれ売ってくれるところがあるならば
ここは なにわともあれ先行者を行かせてでも買うのである
桃の山を前に品定めしてた初夏の頃のようなそんな余裕を持ってね
ワタシの嗜好を告白したところでなんの面白味も感じないだろうが
”ワタシはとても桃が好きで葡萄もだい好きだ”
そんなわけで 通り掛かりの農園へづかづかと乗り込み 無遠慮に葡萄が欲しいと伝える
すると出荷作業に忙しい農園の衆らが一斉にワタシへ視線を浴びせるのだよ
が ここで怯んでは負けなので --- 正確にはここで勝ち負けはない --- さらに葡萄が欲しいと畳み掛ける
”うちで食う分だけでいいから欲しいんだが”とね
そこまで食い下がると --- 実際はもっと友好的だった --- やれやれといった感じで主人が相手を買って出てくれて
真っ黒で確り熟した大粒の葡萄を三房ほど分けてくれた 食いながら行けと半端物の褒美も付けて
早々に葡萄を手に入れてしまった事で
今日の日程はほぼ終了 --- 何故かいつもそういう気持ちになる--- と言っても良い雰囲気に包まれる
そなん幸せ者は
このあとは --- さかなつりは --- 付録みたいなものなのだ
と少し気の抜けた風な感じのままで車止めへと向かう
勿論 さらなる幸せをと願う気持ちもあるんだよ
幾匹か相手をしてくれるのがいてくれれば、、、そんな希望をいつだって抱いてはいる
贅沢を言えるなら 両手に余るほどのが一匹混じると尚良いかしらと、、、
しかし 今年の状況からすると望は低めに置いておいた方が無難なのだ
だから欲をかかずに この幸せ(葡萄)に浸って午後を過ごそう
--- まだ朝ではあるんだが ---
これ以上の出来事は余禄なのだと、、、
谿からあがって森を抜け廃道を戻る途中 湿地の湧き水にゲンゴロウがいた
そこにゲンゴロウがいたからこれからもこの谿へ通うと思う
例え”ゲンゴロウが居たからなんなんだ”と言われようともね
とにかくだな
大岩に手を突いてでも そうやってでも歩けるうちは
まだもう少しの間はこの谿へ通うと思うよ
そうやって大川へ降りる事に少しでも長く抵抗してみようと そう思う
ゲンゴロウだとか なんだとか 色々とそういった言い訳を探してでもね
初秋に高原の谿で
膝が痛い ふらい麻呂
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