2020/10/08

夏やま

 

何年かぶりに盛夏の最中に山へ上がった

それというのは

登山道点検の為 という事であって

暑い最中に自ら進んで計画してやまへ行った訳ではないのだが

何れにしても どんな形にせよ 

--- 捜索や救助なんかは別にして ---- 

やまへ入れるというのは愉しい事だ

初日

陽が高いうちに両俣へ入って少しだけ釣をした

去年の台風で無残なまでに埋まった沢だったけれど

10ヶ月ぶりに訪れてみると長雨のおかげか

だいぶ砂が流され幾つかあった淵も深みを取り戻しつつあった

淵が戻り瀬に石が無作為に並ぶ様を見て

まだまだここで釣が続けられるのだと思うとそれだけで幸せな心持にさせられた

もっとも近年は 年に一度か 二年に一度か

ここで糸を垂れるのはそれくらいになってしまったけどね


あくる日は野呂川越に取りついて仙塩尾根を三峰岳方向へ歩いた

ここを辿るのは五年ぶりくらいになるかな

その時はFREELIGHTのじゅんいちくんと熊の平へ向かったはずだ

確か長い森を抜けるまえに腹が減って樹林の中でらーめんか何かを煮て食ったんだけど

もう少し我慢すれば眺望が開けた平らなとこがあったのにと、、、

いつもの事だけど 辛抱強くないのが仇になり 度々変な所で長い休憩を取りがちである


南アルプスの森は深くて森林限界も高い

一刻も早く遠くの眺めが欲しいと思いながら歩いているといい加減うんざりさせらるから

   ”森の中を歩くためにここらへ入っている”

ここら界隈ではそのくらいの想いを携えて歩くのが良いと思う


結局のところ樹林帯には大した倒木もなく登山道は正に快適だった

なので 平穏なまま三峰岳まで --- 息は絶え絶えだったが --- 辿り着けた


ここまでくればあとは水平路を行くようなものと考えていたけれど

記憶と現実とはかなりの隔たりがあったようで

間ノ岳までの登りはちょっとした誤算、、というよりも長い長い登りだった

でも 道端にセミが居たり花が咲いていたりと休む口実は幾らでも見つけられたので

だれもいない広い稜線で

三歩歩いては休み もう三歩あるいては休みとのんびりさせてもらった


花はどれも盛りを過ぎてはいたようだったけれど

滅多にこの時期にあがってこない身としては十分な開花量で

そんなのを眺めたり くっきりと浮かんだ大きな雲の形をぼんやり眺めたり、、、、

   ”なるほど夏やまも悪くないね”と

腰を下ろし汗が乾いて そうして再びルックサックを背負う頃には

そんな考えが少しだけ頭をよぎる


二日目は幸か不幸か稜線上で行程終了となる

なので いくら早くに着こうがさかな釣は出来ない


”さかな釣が出来ないがそれと引き換えに眺めはすこぶる良いだろう”


などと言われても そう長くは景色を眺めて居られるものでもなく

結局陽も高いうちから飲んだり食ったりすることになる

暮れる頃には粗方食いつくし飲みつくしてしまいする事がなくなる

それなのに眠くもならないと来ている

いくらでも時間があるというのは幸せな事だけれど 時々辛くもあるね


さかな釣となれば何時まででも遡行して幾らでも時間を食いつぶせるのだが

そこに座って酒でも舐めながら遠くを眺めていろと言われると、、、

落ちつきのない性分なのかそうもいかないのである


最終日も良い天気


夏やまで三日も晴れ続きで雨の一滴さえも落ちて来ないなんて事があるのかと

それはそれでありがたいけれど なんとなく不思議な気持ちである


三日目の行程は長い

下って両俣でもう一晩過ごす手もあるが

そうすると きっと最後は雨の中を歩く羽目になる そんな気がした


夕方までに車止めに届くよう通行止めになって久しいルートをひたすら辿る


下り始めるとあっけないもので

大きなカールを左に見ながら

ハイマツの中をすたすた下るとあっという間に樹林帯に入る

すると両俣小屋辺りと同様にあちこちに崩落や倒木帯が現れる

19号台風は稜線への影響こそ少なかった様だけれど谿合いは可なりの荒廃ぶりだ


かねてから小屋番が口を尖らせて”そっちへは行くな”と登山者に命令しているが

それは正しい忠告である

もちろん多くの場合何事もなく通過できるかもしれないが

大きいか小さいかは別にして事故が起こる確率は非常に高いだろう

そうなればその者たちは通過できないで 更には誰かの助けを乞う事になる


なので ここは先ず

どうか復旧整備が終わるのを待って欲しい

それからゆっくり愉しむのが良いと思う

散々ここらで愉しんだワタシが言うのもなんだけど

兎に角今はそうする事が最善だと思う


思っていたよりも早くに谿へ下った

谿は勝手知ったるなんとやらなのでなんとなく安心感が涌いてくる


それにしても左俣大滝を眺めたのは久しぶりだ

どこかしらが崩れたりとか少しくらいは変化があるのかもしれないけれど

いつか観た大滝とまったく変わっていないような気がした


大滝のシモ手で 久しぶりついでにぺったりした頭を谿の流れにひたした

顔も手も腕も洗う、、、、


水が豊富だというのはホントにありがたい事だ


前にもなにかに書いたけど

アプローチが平たんで 水が豊富で 布団まである

そしていくらでもさかなが釣れる

そんなとこがあるなら日和ってあたりまえだ


これからもこの谿合にある小屋で時々過ごせたらと思う


盛夏に

登山道点検パトロールで (Aug/2020)

*時々現れる登場人物は同行者の小屋番マキノくん

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