2020/07/28

あめごつり


あめのなかで釣をするなんてまっぴら
だけれど そんな事ばかり言っていると
今年はさかなの顔もろくに拝めないまま漁期が終わるかもしれない


だからちょっとくらいあめの気配がしていようとも釣りに行くのだ


お天気なんてのは
三日にいっぺんくらいの割で晴れたり
三日にいっぺんくらいの割で曇ったり または あめが降ったりする

割は三分の一
とすると月に四度の機会があったとしても
そのうちのいっぺんは雨で もういっぺんは降るか降らぬか怪しいとも考えられる
となれば 天気を気にせず(しかし先着者の事は気にして)出かけられるのは
たったのいっぺんだけどなる

なので もし 休みの朝に目が覚めて その時にあめが降っていなければ
その日はまあまあ運が向いていると考えて
その運が逃げて行かぬ間に 急いで釣仕度を整え谿沢へ向かうのだ



またしてもそんな運だけを頼りにノコノコとやって来たのだけれど
恐る恐る長い隧道を越えると、、、、、運よく晴れていた


我れの強運に酔いしれならが
自宅の駐車場へでも止める様なスムーズな動きで車を路肩に乗り入れ
嬉々として身なりを整え
棹を継ぎ 手早く仕掛けを通し 小走りに谿沢へ降た

水嵩も凡そ平水で
水色だって気持ち良いくらいに澄んでいる
これで釣れなければ
それはもう我に問題がある、、、以外に有ろう筈もないだろう

河岸に降りると生ぬるい空気が漂っていて
すこしの風もなかった
そんなだからか 湿気が動かず充満している

おかげでじっとしてるだけで全身がベタベタになった

川面から湧きあがった靄が霧になって沢沿いにとどまっている

靄は岸へは上がって行かれない様で
一メートルかもう少しくらいか
とにかく流れからそのくらいあとじさりして少しだけ岸へ上がると
傍を流れる谿沿いに帯状のモヤモヤが何処までもつながっているのが見えた

一日中そんな靄の中で釣りをした

釣の始めには ”是非ともあまごを” と 心からそう願ったのだけれど
そなんな思惑は軽く外され あっさりといわなが釣れてきた

この時 ”なんだいわなか” と正しく そしてつり人らしく落胆するも
そのいわなのヒレやら頬やら
それだけじゃなく ほかのあちらこちらが橙で
これはまた良い色のいわなだなと、、、
ぶる下げて大人しくなったそのいわなを眺めているうちに少しだけ気を取り直す

だけれども ”次こそはあまごが掛かりますように” と心の底から念じるのであった

晴れます様にとお天道様に願うのと同じに
さかな釣にしても 念じれば叶う、、、事もある

ひたすら ”念じた” からなのか
余計な事は考えず念じ続けたからなのか
終いにはあめごが釣れた

願ったり念じたりと
いくら信心深いワタシでもこの日くらいあちこちへ頭を垂れた事はない

が 幾ら念じたり願ったりしたところで腹が余計に減る訳でもなし
さらには借金が増えるわけでもない
なので それしきの事で済むのならば
今後も一心不乱に願い念じ続けようと思う

それにしてもこの谿は
空が晴れていようとも そもそもそれなりに薄暗い
そこへきてこの川霧だから
怖がりのワタシは30秒毎に首を回してあたりを伺う事となる

トントンと調子よく釣り上がっている時などはそうでもないのだけれど
ポツーンポツーンくらいにしか掛からない時なんかは
なぜか背中の方がしきりに気になるのである

気になり始めるともうとめどがない、、、

例えば
あっ白いきのこが、、に始まり
あるはずもない(と思い込んでいる)白い樺の木がぶっ倒れてるぞ、、だとか
さらには あの白くて得体の知れないもの(見えもしないのに)はなんなんだ、、となる

そうやって白い何かがワタシの心をかき乱すのです

それくらい怖がりなので 常に暮れないうちに谿から上がる事にしている
暮れる前がよく釣れるんだ、、などと言ってると
実態の伴わないなにやら白い物ならまだしも
実態のある黒くてデカいのに追われるやも知れないのでね

幸いにして 知れないものが出て来る事はなかったし
幸いにして あめにも降られなかった

ここら辺の谿からだいぶ長いこと遠ざかっていたのだけれど
久しぶりに様子を見に来てみると
その昔よりもさかなは見えるし反応もよかった
なので次もまたここらへでもやって来て続きを流してみようかしらと、、、

今夜も明日もまたこの先もずっとあめ模様
これじゃあ当分の間は深山の谿沢は水も多くて遡行は難儀だろうと思われるから
当分ここらで、、とね

あめの合間にあめごつり
やま里の外れで

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