6 Apr 2018

秋のつり



漁期残り僅かなのがいぬにもわかるのかは不明だけど



もうあと数回程しか谿で遊ぶ事が出来ないからと
台風の雨が去った翌々日だかに
いぬを誘っていつもの谿へでかけた



谿の水もそろそろ落ちた頃だろうと
淡い期待をしてはみたものの
嵩は想像通り 悪くても、、、と思い描いたとおりの水量で
なので これも想像通りにいぬが流されて行くのが何度も見られた

そんな状況だから
さかなも正しく岸際の緩い流れに大挙して集まってる筈だったんだが
そこは他にも同じような事を考えている働き者が大勢いるようで
朝早くに それも丁寧に ヒト流しもフタ流しもされた後なのか
快適そうに見える淀みにはさかなの陰すらも見えなかった





翌週は久しぶりに浜松の衆らとやまへ入った
もちろんやまへ入ったのはつりの為だ

この夏に この日と同じように
はままつくんに連れられて偉い長丁場を歩きに歩いたんだが
その割に 肝心のつりをした記憶がほとんど無い、、そんな目に合わされたばかりなので
今回は”あの半分だって歩きたく無いんだが”と予め伝えてあった
それが功を奏したのか
今度の歩きは半分どころか
その三分の一くらいで無事にテン場へと不時着出来た




いつだって歩きはじめの急登ときたら ここへ来たこと事体を後悔させられるんだが
それでも 辛抱して 小一時間も歩き続けると少し余裕が出てきて
するとこんどは その先へと突き進むのが楽しみになって来る

そう言うと聞こえは良いが
喘ぎながらどうにか歩いているという事に違いはない
であるから やはりそこは 一刻も早く穏やかでなだらかになって欲しい
そう願いながら一生懸命に足を前に出しているのである
兎に角 早く一段落してもらって
後はこの先ずっと
息が切れない程度の 例えば近所の坂道くらいであってくれるとありがたいのだがなどと



歩いている間は
常に不平と誰にも叶えられない希望の限りを口に出しながら歩いている
皆がそうだから この一団は結構騒々しい
でも その騒々しさが消えてシンとしてしまったら
そしたら我らは終いかも知れないね

”このまま明るくて穏やかな森が続けばいいのに”とだらだら歩きながらよく思うのだ
先にも記した通り ちょくちょく口にも出す

するとそれが突如として実現する事がある
大木だらけの平で広い尾根がずっと向こうまで続く様がね

でも実際にはその向こうの向こうは見えてないから
歩き続けていると
さっき見えてた境の辺りが何処だったかすら判らないまま
気が付けばまた結構な角度で登らされてたりする
そしてそこを登り切ったと思うと
今度は手ごわい藪漕ぎがとか
次から次へと現れる倒木跨ぎとか
そんなのにほんとにイライラさせられて
”あれあのひらたい所は何時終わったのかな”なんてふり返る事すら忘れてる
そんな事を考える以前に心が折れかかる寸前なんだから仕方がないけどね
で”ホントに昼までに着くのかね、、”といった疑いの其れが徐々に芽生えはじめるって訳



そうこうしてると決まって腹が減ってる事に気付く
あと少しだから、、、なんて気張って歩いていると途端にヘロヘロになるから
そうなる前に 我に返る切っ掛けに一休みしようかねとなる

見通しの効かないちょっと薄暗い森の中
それでも少しでも明るい所を見つけて自分の半身程もあるルックサックを下ろす
で”今どの辺りかね、、、”と皆で行く手を探すんだけど
地図さえ出さないでそんな事を始めるもんだから一向に埒があかなくてね

でも 結局は向かう方向さえ合ってればいいんだからと
二つに一つの方向を指して”あっちに違いない”と
さも知った風な素振りで当たり前の方向を指さしてみる

そうやって”そうだねあっちだね”と全会一致をみてその会議が終わるのだ
終わったら(終わらないうちに)終わったで
手に持ったまま振り回していた握り飯や何かを食わなきゃならないから
短い会議の後に素早くそれを頬張り
それを飲み下す間も惜しむように歩きはじめる

誰かが誰かに”ゆっくりで良いよ”とは言うんだが
きっとあれは口先だけなのかもしれない

何故って 急がないと昼までに辿り着けないじゃないか ってなるからね



そうやってちょっと休んで何かを頬張ったり
全体会議で方向が定まると 時に現れる不安や不満が何処かへ消えてなくなる
で それを何度か繰り返すと
いつの間にか目指すべき谿底へと続く下降点に到着しているのである




昼飯を河原で食える幸せ

そんなの当たり前なんだけど
一度でもその当たり前の事が叶わなかっただけで
なんだかこの当たり前の昼飯がやたらと幸福な昼飯に感じる

昼飯でこれだけ幸せいっぱいになれるなら
夕飯食ったら昇天しちゃうんじゃないか、、と思えるくらいにね



釣りが出来る幸せ(昼からつりが出来る幸せ)

つりに来ているのだから当たりまえなんだが
この当たり前が叶うか否かでその幸せ指数の針の触れ幅は大きく変わる

朝に それも相当早くに発ったのだから
せめて昼から釣がしたいと説に願っていた
ちょっとくらいは妥協しても良い だとしても午後一は譲れないと

まあ幾らかの妥協は強いられたのだけれど
誰かがうでてくれた蕎麦をニコニコしながらかっこみ
その昼飯の幸せを携えたまま
”やくそくの午後いち”から 幸せのさかなつりへと繰り出した



水嵩が低くてちょっと嫌な予感がしたけど
晩に食うくらいのいわなを釣るのには困らなかったし
釣そのものだって ”ここまで来て、、、” なんて事にもならなかった



留まで幾らもない小沢だったから
ささっと釣遡るとあっけなく留の棚に着いた
正直もう少し釣遡りたかったけど
先に見える大棚を越えたところでいわなが居るとも限らないし
そもそもそれ以前に十分釣れたから余計なアルバイトは止そうとなった

目くじらてて そこまでしていわなを追う必要もないからね
熾した焚火で焼く分はとっくに獲ってあったわけだし
そもそも食うものなら
もしいわなが獲れなかったとしても十分持って来てたから




幕場に戻るとじゅんいちくんが夕餉の支度をしていた

この前もそうだったけど
このヒトは何時だってさっさと次の事に取り掛かってくれるんだ
せっかく釣に来てるんだからもう少し釣ったらいいのにって思うんだけど
流石に名人ともなると 達観しているとでも云ったらいいのか、、、
でも彼のおかげで それはそれはスムースに事が運ぶから
これからも ”釣はそこそこに” としておいてもらおうかと思う



アルゴビっていうんだっかな
その要するにカリフラワーのカレーなんだけど
早い話がこれが好きだ
いわなには申し訳ないが 今晩はこれだけでも良いと思ったね
実際には肉食ったり きゅうり食ったり
とにかく他にもあれこれ飲み食いし尽くしたんだけど




翌朝はほんとにのんびりしたものだった

確か鯵かなにかの干物を焼いたんだったかな
さかな釣に来てるのに干物なんてね
でも干物もカリフラワーのカレーくらい好きだから
この日も朝からとても幸せだった
もう釣なんていいかなって思えるくらいにね



だけど そう思ったからって それがほんとに本心だとは限らないんだな
でも 足ごしらえまでして、、とまではならなかったけどね



帰路は割とあっけなくヒメシャラと栂の森へとたどり着く

尾根を一つ踏み間違えて
奥にある山の頂上を周る事になったのだけれど
あれはやや確信犯的なところもあったかなと
いまにしてみればそう思える
これほど遠くて奥にある山へ登ろうなんて
こんな時にでも迷い込まないと
そうそう気軽に登りに来ようなんて考えもしないだろうからね

何れにしても
前回のように ただただ歩くだけの釣旅にならなくて本当に良かった
ちゃんとつりもしたしね

そんな晩秋の河原にて
2018/09/25-26

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