3 Nov 2017

残雪の頃に



春も遅くに沢沿いの道を歩いた






連休明けに休みを一日多く取り
三日間の日程で
いつもの二人と共に まだ春浅い残雪の高山へ向かった

里では、、というより そこいらの山でさえ既に初夏らしい陽気である
それに 沢の奥深くでも普通にいわな釣が出来る程の温さでもある
そんな良き季節にわざわざぬかるんだ残雪の山へ向った



お決まりの永遠の林道歩きが終わると
いよいよ山らしい道となり とたんに沢沿いのその道の雪はうんと深くなる

雪が深くなる、、、というと聞こえは良いがこの頃の雪は酷くたちが悪い
潜る滑るは当たり前で 油断すると沢の方へと転げ落ちて行ってしまうから気が抜けない
おまけに四六時中滑ったり潜ったりと 足元にばかりに気が行って余計に疲れる
まあ いつもの何倍も疲れるのを見越してのこの日程だから
幾ら潜ろうが滑ろうが 日が暮れる前にテン場に辿り着ければそれで良いのだが、、、



幾つか押し出しの強い峪を跨いでようやくテン場へと近づいてきた
青かった空はとっくの昔に白くなっていて
間違いなく雪でも降るだろうといったそんな雰囲気だったが
しかし 季節は既に初夏
とくれば降るのは雨である
そして無情にも 約束通り 雨が、、、



雨がやってくる前に幕を張り終え
見納めとばかりに
拝み倒すように
ギリギリまで
そこに見えている黒い山を眺めておいた



それから直ぐに黒い山は見えなくなった
なのでやる事の無くなった三人は
三様に
飯をこさえに幕内へ籠った



湯が沸くまで景色でも、、

そんなほんの少しの贅沢さえも叶わず
だからなのか
下界に居る時同様に
小さくて四角いテレビみたいな機械に手が伸びる

惡いコトに弱いながらも電波が届いていた
そして
更に悪いコトに
向かいのエンジ色の幕に居る男になんと仕事の連絡が、、、



湯が沸いたら沸いたで
軒の低い幕の下にて縮こまり 熱い湯に浸かった袋を取り出す
中身をこぼさないようにと 全神経を集中させて

雨のおかげで何もかもが億劫になった我々

そんな時でも「これ食うかい?」とお互い精一杯努力をして優しい言葉をかけあう
そこで何方かから「食べます」との返答があればあったで
こんどはテントとテントの間を肉辺やチーズの塊が宙を舞う
それのいくつかは丁度良い処に着地するが
更に幾つかはうまい事入口をすり抜けてベッドルームの奥深くへと消えて行く

そしてあっという間に陽が暮れて、、、、




夜中に一旦あがった雨が
明るくなる頃になってまた降り出した
なので当然そんな雨の音を聞きながら悲惨な朝を迎たんだろうと思われる

今となっては笑い話のような想い出だけど
あの時は正直 ”いやぁ悲惨だなあ、、、” ってね
閉め切ったフライのチャックを永遠に開けたく無いと思ったね

フライを閉めたまま朝飯の支度にかかるのだって初めてじゃなかったけど
あの日 閉め切ったテントの中で湯を沸かしている時程
あれ程に中途半端な心持ちで過ごした事はなかった様に思う

だけど そう言う事って普通にあるもんなんだよね
有って当たり前って言った方が正確かもしれないくらいにね

誤解を招くといけないので一応ことわっておくけど
良い日のそれが良い思い出になるのと同じで
それほど良くない日のそれだって
更には 悪かった日や悲惨な日の思い出だって
余程酷いことが起こらなければ それだって良い思い出になるんだよ
不思議な事にね、、。

2017/05/09〜11(素敵な日程) → 2017/05/09〜10(良い想い出)
槍平にて

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