6 Oct 2017

初夏のつり



五月になった
ここまで季節が進めばもう怖いもの無しだ
余程の深山へでも行かない限りはそれなりに釣りなるはずである




そんな初夏のお天気に恵まれた良き日に 幕を担いでヒラタさんと一緒に釣にいった

歩きはじめから「暑い暑い」「そろそろ飽きた」と文句ばかりが口をついて出てくる
ここの林道歩きなんてのは ものの2時間かそこらだというのに



それでも約束通りに
ボクらは2時間かそこらでアイヌネギ畑の脇にあるテン場に辿り着いた

しかし 辿り着いて天幕を張り終え
インスタント麺か何かを食った後
さあそろそろ釣へでも、、、という時になって雷が鳴り始め大粒の雨が落ちてきた

ならばこれ幸いと 寝不足でもある事だし
ここは止むまで寝てやり過ごそうかという事になったのである

雨に勢が出てきたのを合図に勢い天幕へ転がり込む

しかし 近くに落ちるカミナリ様の轟音に恐れおののき
いつしか眠気も何処かへ失せ行くのであった

おまけに透けた幕越しに見えるのは間違いなくオレの釣棹で
それが何故か外張りのチャックに沿って立て掛けてあるではないか
どうしたらこうなるのかはまったく知るよしもないが
とにかく棹が 今入ってきた外張りの出這入り口にピタリと寄りそって
避雷針の如くそこに立っているのだ

もしやあれめがけて雷さんが降りて来るかもしれない
と気が気ではなく
でも細枝程の棹なんぞ
そのうち風に煽られてひとりで倒れてくれるだろうから放っておこうと

いやいや貴方それは直ぐに横にしないと、、
でも、、、
そうするには外張りを開けて、、、、
となると盛大に濡れるかしら、、、、、
でもかみなり様に射貫かれるよりは、、、

結局はなすがままに、、、一か八かにかけて目をつむった、、、、、



気が付くと陽が差し込んで幕の中がやけに蒸し暑い
どうやら生きるか死ぬかのアノ賭けには勝ったようである

しかし 未だ五分と五分 ワタシたちは二人で来ていたのだ
両名生きながらえての勝となるはずである

であるからして
やや恐ろしいがヒラタさんの安否を確かめようと外張りを開き首を出す
すると
中途半端に開け放たれた外張りから足が出たままの姿で横たわる隣人が視界に入った

ナンマイダナンマイダ、、、

その横たわる姿がどの様な姿かというのは
誰もが簡単に想像がつくであろうがあえ記そう
簡単に説明すると ”それはそれは とても男らしい寝姿” であった

もう少し補足すると 焦げてはおらず かといって活き活きしている様でもなく
ただただ丸太ん棒状の、、そんな形で寝ているヒラタさんの姿がそこにあった



そんな訳で
天の怒りも通り過ぎた様なので釣に出た

しかし 雷さまに数時間も閉じ込められた後では
もう奥の峪へ分け入る余裕があるはずも無く
だからと言って別にボクらは腐る事も無く
普段から物分かりの良いボクらは
目の前の流れで
陽が暮れるまで釣れない釣を心から愉しんだのである

それは ”明日もあるからね” そんな心の余裕の現われでもあった



陽が暮れて
火を熾し 汁を拵え飯を炊いた

遠くで雷がなっているのが聞こえる
だけれどアレはもうこっちへはやって来ないという確信の下
なにに構えるでもなく 
そもそもそんな必要も無いから
愉快に酒を飲んで
飯を食って
また飲んで また飲んだ



とっくに陽が昇ってたのは知っていたけれど
峪筋に陽が差すまでは知らんふりを決め込んで寝ていたかった
初夏とはいえまだまだ朝は冷えるからね

しかし いつまでも寝ていると
シモ手から早起きの働き者がやってくるかもわからないので
いい加減遅くならないうちにと起き出して
昨晩の残り汁に飯を放り込み
そんな適当な朝飯ののち きのう行きはぐった谿の奥を目指した



なんて事のない通らずを二三ヶ所越えると
あとは何処までも開けた白い峪が続く
ここの谿は白くて明るいから
晴れた日にここを遡るのは実に爽快だ

温かくなって来るにつれていわなも浮いてくる
それは時間と共に釣りが簡単になるってことだ
そうなれば何も考えずに思い付くままに毛鉤を放ればいい
そうするだけで適当に釣れるからね



ここには明確な魚留めはない
だから それこそ源頭の水溜りみたいなトコまで行ってもいわなが釣れる
だけど 今ではそこまで行く事は無いしこの先も無いと思う
だいたい其処ま行く必要なんて無いからね

もう何十年も前に確かめたんだよ どこまで魚がいるのかってのは

夏のはじめに ヒラタさんと

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