10 Aug 2017

桃の季節に



前の晩に雨が降った
降ったのは此処いらではなくて山のほうでだ
 --- 先週は此処いらでも山でも降った ---


雨は一旦上がって
朝から昼まで晴れたり曇ったりの予報
 --- 先週は夕方まで晴れだったと思う ---

その後は ご存じの通り
夕方から台風が雨風伴ってやって来た
 --- もちろん先週は台風なんて陰も形も無かった ---



前の晩の雨は 期待以上の降りだったようで
川の流れは当に塩梅も良さそうに滔々と流れていた
 --- 先週はコレっぽっちの嵩も増やさなかった ---

久しぶりに大川とも呼べそうなそんな流れで あまご釣が出来ればと思いたったのである

薄暗い枝沢の底へ一旦降りるのだが
何時もと同じなのは此処までで
その薄暗い沢を伝って少し下れば広くて明るい流れが待っている

出合のシモ手には大きな堰堤の落ち口があるから
雨で太くなった流れに足をすくわれない様にちょっと注意して渡る
普段より勢いがあるからちょっと滑るとドキッとさせられるが
きょうはいぬはいないので
そういった意味では他人様の心配をしなくて済むから気が楽だ



雨のおかげで嵩が増してるので瀬が広くて長い
見渡す限り瀬が続いている様にも見える
毎回峪底をうろついているからか
たまにこういうトコで棹を振ると 手足の縄を解いてもらった様にすら感じる
まさに自由だ

自由になった分 いつもよりもちょっと長めの仕掛けを組みつけた

しかし 自由を謳歌したくなるのはワタシだけではないのだ、、またしても

この時はヒッピー(な気分)じゃなかったから
他の釣人とピース&なんとかなんて気分にはならなかった
逆さまだな 釣人だからそんなフラワーな精神には程遠いと、、、

とにかくだ
またしてもこのワタシなんかよりもうんと働き者に先を越されていたのだ
 --- 先週と一緒だよ ---

普段なら潔く諦め 
せっかくここまで出張ったのだから そうだな友人の墓へでも参ろうかとなるのだが
残念ながらこの日はそうはならなかった
朝早くに出てきたというのもあったのだろう いつもと違って諦めがすこぶる悪かった
 --- このあたりは先週とはまったく違う 悪あがきの結末は決まってはいるが ---

こういう時こそ事はよく無い方向へと進むものだ 特に往生際が悪い時ほどね

誰かが少し前にひと流したであろう事を承知で
またしてもそこへ毛鉤を振り込まざるを得ないという事なのである
雨で水量が増えて多少あまごが色めき立っているとはいえだ、、、

それでも
幸運にも強い流れの底から駆け上がってくるキラキラしたあまごが居た
更に二度三度と毛鉤に触る手応えをも感じる事が出来た

こう云うと
良き日の悪い条件の中で良き結果が得られた様に思われるだろうが
つり人というのは手元に寄せられてこそ、、といった結果が全てでもある
まあ 早い話が坊主だったという事である
 --- これも先週と同じだ ---

悪い時とか 弱ってる時というのは 不運が重なるものだ

諦めを決意して そろそろ上がろうかと上流に目をやると
そこには先ほどの働き者以上の働き者が今まさに棹を納めるところだった
 --- この展開も先週と同じである ---

ここまで後手に回っているのを思い知らされると
もはや せめてイチ匹でも釣ってやろうなんて気にもならない
しかし それもでこの意地汚さはどうにもならならず
車止めに着くが早いか
まだきっとチャンスはあるはずと 沢履のまま車に乗り込み勢い我が4x4を発進させた



大川を離れ 東へと向かった
その街道には 桃が、、、

いま時分は桃の季節 その桃は葡萄と並んで大好きな果実である
そうなればそんな素敵な桃を手に入れない理由もなく
なんの疑いも無く
目星を付けた農家の軒先へと車を乗り入れた

おばちゃんが飛んで来る様に出迎えてくれるはずだった、、、想像ではね
しかし いつまで待っても誰も姿を現さない
仕方なく声をかける 二度 三度と

すると暫くした後
そこのお嫁さんらしいおばちゃんが現れた
何か言いながらね

手元にはボウルと小刀
こちらへ向かいながら何か言っている
「さあどうぞ座って食べてください」 は聞き取れたが
それ以外は不明だ

ボウルと小刀をテーブルに置いて また 「さあどんどん食べてください」と
しかしながら一向にそれを剥いてくれるそぶりは無かった

遅れて現れたお母さんと呼ばれていたおばちゃんも同様に
「さあ食べてください」と言いながらも
薄汚い格好の釣人にそれを剥いてくれる事はなかった

なので ワタシに出来る事と云えば 座って固まっている事だけだった

暫くして どうやら自分で剥いてどんどん食えという事と理解するのだが
今更小刀を手に桃を剥く気にもならず、、
と言うより アレを剥くと汁でダラダラになるのだよ
ドライブ中の身にはちょっとばかり躊躇するんだな 桃剥くのは、、、

とにかくここでこうして
収穫済みの桃を箱に詰めてる姿を見物してるのも悪くも無く
なんと言っても手際がいいからね そういのは見ていても飽きないんだよ

で また 時々振り返っては食え食えと おばちゃんとお嫁さんらしきおばちゃん
そんな二人を眺めつつ 釣を諦めのんびりしていると
突如集落内に響く台風襲来の注意喚起放送

するとおばちゃんらの手が一瞬止まり
「だからどうしろというのかね、、」とおばちゃんとお嫁さんらしきおばちゃん

この時 既に桃を剥くのは面倒だとの結論に達していたワタシは
そのまま食えるバタンキューを齧りながら 二人の疑問に相槌を打ってその場を凌いだ



うちに戻ると
台風のニュースでテレビはジャックされたかの様相だった

おまけに大月辺りでは相当の雨が降った様で
高速道路も大混乱だったらしい事が分かった

事が過ぎてからなのでなんとでも言えるが
普段なら迷わず甲州街道か高速道路を使っていただろうに
あの時は不思議とそっちへ向かう気さえ起こらなかった
もしかしたら聞き取り困難だった言語の一部は
「たまには山路回ってけえればよかろ」とでも進言してくれていたのかもしれない

なにはともあれ
あの方らのおかげで静かな路をのんびりドライブして帰る事が出来ました
さかなは釣れなかったけどね

夏に
ライ麦畑じゃなく
嵐の前の桃畑でつかまえられた
という話

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