2017/06/22

そして蛭ヶ岳へ


2007/12/08 山頂にて rio

ほんと 蛭ヶ岳へはずいぶんと上がっていない




二月のある日 またしてもツダくんと山へ

いぬを連れて行くか迷ったけど 梯子があるというので置いていった
結局はなんてことの無い梯子だったのだが 、、、 まあそんな事もある



登る途中で西湖を見下ろすとネッシーの泳ぐ姿があった
今ではネッシーを追うものなどが居ないのか
彼(彼女か)は穏やかな水面を のんびりと右から左へ
誰にも気兼ねする事無く ゆっくりと優雅に泳いでいった



冬とは思えない暖かな陽気で
山頂は無風快晴といった 当に此処で飯を食わずして何処でといった環境だった

こんなに穏やかなら もっと手軽な火器を持ってくるんだったと思ったが
こればかりは上がって来てみないと分からない

冬の間は大体何時もこんな風である 分離型のガスストーブとアルミ風防

この組み合わせなら殆ど何が起ころうと慌てる事がない
ちょっと嵩張るが 冬に 山の中で温かい物が食いたいなら
あまり冒険的な火器は持ち歩かないほうが身のため ひいては人の為でもある


-- 画像 黄色のツダくん --

それにしても良いお天気で
となりの富士にこそ雲が乗っかってはいたものの
西の方を仰げば 遠くの南や果ては北のアルプスまでが良く見渡せた



まったくもって冬としては穏やかで暖かな日であった

それでも稜線だけを見ればそれなりに冬らしくもあり
そんな穏やかな日和に多少拍子抜けした事を差し引いたとしても
真冬に暖かさを感じながら雪の上(少ないながら)を歩けるというのは幸せな事だと

そんな一日の終いには 辻褄合わせなのかはらはらと小雪が舞って
それは ”寒さは直ぐ戻るってくるよ” と云っている様だった




翌週は 小原宿に車をうっちゃって
小仏峠へでも上がろうかと相模湖辺りへと出かけてみた

国道っぱたに小原の郷というのがあって 其処に車をとめられる
昼も過ぎたころに目指す郷へと到着 そしていざ車を離れようかと云うその時
郷の管理人か何かに呼び止めらる事となったのだが
その方がこう云うのだ 「ここへ犬をいれては困る」 と
ならば 「ここへ車をとめてはダメか」 と尋ねると 「それはよいが」と云う
なんだか知れないが よくよく尋ねると此処で遊ばせてくれるなと云う事らしい
更に「4時半に此処を閉めるので 4時15分には戻って欲しい」とも、、、
まあ とにかくそんなやり取りがあった

だからといって それが元で向かうべき方角を惑わされた訳ではないのだけれど
気がつけば小仏峠とは正反対の方向へ向かっていた
しかし それに気づいたのは歩き始めて15分もした頃の事だった
今更戻り反対の方向へ行くにしても時間がかかる
そう あの方とも施錠15分前には戻る約束をしてあるのだし 今更だ、、、

かくしていぬとワタシは何食わぬ顔をして
さも最初からこの路を選び進むのだといった体を装い通した

そして その平静の体を装ったまま
最初に目に止まった仕事道らしい道を登り始めるのである

しかし それは幾重にも交錯した杣道で、、
それでも 路を見失いそうになりながらも
最初に取りついた勢いそのままに 真っ直ぐのみを選び続けそして登り続けた

すると 程なくして覚えのある大平の東屋に出たのであった



ここから先は一度歩いたことがある その時もこのいぬが一緒だった
確か麓の神社に御神楽の舞台があって その脇からここへつづく道へと取りついたと思う
あの日もあまり時間がなく(出が遅く)矢の音とかいう所まで行って
帰りは来た道ではなく 一本西側の峪沢沿いを下ったはずだ
何れにしても ”植林の暗い単調な林” くらいの記憶しか残っていないのだが、、

この日は
尾根に出たところで前に来た時とは逆の方へ向かった
その向かう先には峠がある事くらは知っていたので



明王峠まで来ると小屋が建っていた
そして小屋の脇に標識があって  mt.Takao →  と

高尾山は可なり近所にある山なんだが ワタシには全く馴染みの無い山である
その山の名前が 今ここに記されてある
それも何故だか知らぬがアルファベット表示で、、、

アルファベットの道標 それはちょっと新鮮な感覚だった

この時 此処からそう遠くないのならと 
それならばこれから行ってみるかと云う気にもなったのだが、、、

しかしながら 現実にはこの時既にそれどの時間は残されておらず
なんと云っても郷の番人との約束は1615なのである
だけれども 気分だけは高尾を目指すべく東へと続く尾根を辿ったのであった

結局は堂所山という所まで行ったところで時間切れとなる
そして高尾は また次の冬枯れの時期までお預けとなった
まあ 端っから分かりきっていたんだがね

それにしてもだ
いつか その近くて遠いやま高尾へ辿り着く事が出来るのだろうか



あくる週は 久しぶりに柴野氏とクライミングの予定だった
しかし 氏の怪我というアクシデントがあり
大の大人が岩に張り付けられ泣かされるのはまた今度となる




遠くの雪やまが恋しいく感じるこの頃 そんな時期でもあったが
何故か今シーズンは(も)あまり足が遠くへ向かないでいる

その変わりにといってはなんだが
ここ暫く ”近くも遠くもなく” ”高くも低くもない” そんな山へ向かう事が多かった

そんな山へ 氏の怪我と自身の体調不良で一週休んだ後
またもやツダくんと出かける事に

---- いつも大体一緒に居るはずの彼の相棒はこの時も自宅軟禁の為未参加に終わる ---



毛無やまからの富士が予想以上に綺麗だった

何処でもそうだけど 来てみるとその良さが分かるものだ
そう 行かないと絶対にその事は分からないのである
でも 行きたくとも行かれない場所というのが沢山あって
だから 行ける時が訪れたなら その時は迷わず行ってしまうに限る
これからもそうしようと思う



移動の時間が苦手ないぬ

道中 ”たっぷりと雪があるんだよ” となだめすかしていたが
車止めには雪がなく ”やい如何責任とってくれる” と迫るいぬ

それでも雪が現れればそんな事などケロリと忘れてくれる



満足したのか山頂で雪を枕に昼寝を決め込むいぬ
付き人同様に ”良いやまだなあ” と感じ入っている様だった





あくる週もいぬと一緒
なれ親しんだ熊笹ノ峰に上がる

この日は終日晴れ予報のはずだった
けれど 予報というのはあくまでも予報なのである

息を切らし熊笹の鞍部まで上がるとなんと雪が降っていた
なので この日は此処までという事が即座に決まる
稜線には踏み跡すら無く
洞へ行くにも 犬越へ向かうにも難儀な感じだったと云うのもその理由のひとつだった

いつもの様に此処に腰かけ 富士を仰ぎならが昼飯を食うつもりでいたが
今此処で湯を沸かして何かするなんてとてもじゃないが御免だ
ホントにそんな状況だった

なにもかもが灰色で、、、
なので ”帰ろう” と直ぐにいぬにそう言った
するといぬは名残惜しそうに南側の峪を覗き込んでから戻ってきて
次に少しだけ犬越路の方へと踏み出すも またすぐに戻ってゴロンと雪の上に倒れ込んだ

しかし いぬにしてもそれが精一杯の抵抗だったようだった



帰りみち
いぬはワタシを待つ事など無用とでも云わんばかりに
振り返りもせず
ぐんぐんと勢いをつけ歩き始めると
あっという間に見えなくなった





そしてこの日
うらやまからでも 未だあそこに雪がある事が見て取れた
だから迷わず 見えるそのやまのある方へと向かった

実際には
朝のさんぽやら交通事情やらでどんどん時間が過ぎてゆくなかで
はて きょうは何処まで行けるかなと
正直まあそんな感じで向かっていたのではあるが、、



久しぶりに良く寝て足が軽い、、気のせいだろうけど
それでも姫次が近く感じたのだから あながち気のせいだけでは無かったのかも知れない



霞んではいたけど姫次から富士が見えた

まだまだ先があるので暫く此処で休む事に

荷物を降ろして握り飯を食いだすといぬが顔を近づけてくる
当然だろうとでも言わんばかりに ”その握り飯” を食わせろという顔で

それにしてもだ こんなに早い時間ここへ来たのは久しぶりである
何時もなら 飯を食い終わると直ぐに夕闇が迫ってきそうなそんな時間になっている
でもこの日は違った
まだ午前中である 時計のみちかい針は未だ12を通り越してはいない
というだけだが 午前である事には誰にも異論は無いはずだ

途中で行き会った人が ”きょうは姫次までだよ” って言ってたけど
ワタシらにしても 普段は此処まででいっぱいいっぱいである
しかし この日はまだたっぷりと山の中で遊ぶ時間が残されていた
いつもより二時間か三時間早くうちを出ただけなのに

此方が飲み食い終わる頃合いよろしく先程話をした人がやって来た
なので 少し未練はあったが
僅かに雪から顔を出していたベンチの端を明け渡し
そして再び歩きはじめた



姫次からは登ったり下たり

原小屋平や地蔵平も 平っていう割には起伏がある
で その辺りを越えるとようやく単純に高さを稼ぐ様な感じになるが
それでも本当の登り一辺倒ってのはこの稜線には無いような、、
そう 蛭は里から登ると深い所にあって立ってる様にもみえるけど
意外になだらかで優しい感じのやまだ

開けた稜線では風が冷たかった
それと高さも少しだけど上がったからか
踏むとキュッキュッと音の出るような雪になってきた
でも 帰りにはこの音も聞けなくなっているだろうなと
登り終える前から帰りの緩んだ雪の事が気になった



最後の登り尾根の手前で いぬが水が飲みたいとキュウキュウ鳴いたので休憩にした



再び歩き出し 少し上がると突然止り そして今度は何故か寝に入るいぬ

ここでゆっくりしても良いが
どうせなら 目と鼻の先なのだから
土産話にもなるから頂上を見て来ないか?
そんな感じでいぬを促すと 彼女は再び歩きはじめた



そして あっけなく山頂へ

いつ以来だろうか此処へ上がってきたのは
とにかく うんと久しぶりに蛭へやって来たという事だけは間違いない



せっかく来たので うちのいぬに 二代目パルくんの居た所へ案内してやった
但し 初代が犬小屋を所有していたかは不明
だいたいその頃に(初代が居た頃)は ここで繋がれたいぬを見たことも無い
更に 昔地蔵平辺りで行き会ったあの子が 果たして初代だったのかも不明だ
とにかく あの子(初代)が外に繫がれていたのは見たことが無いので
それら諸々を確かめようもない
いや 小屋番に聞けば分かるだろう
でも 想像しているだけのほうが良いという事もある
特に先代いぬとのおもひでの中に生きるワタシには、、、

確か雷滝を巻いて取りついた先を登ると此処へ出たと思う
尾根の名前は憶えてないが 途中に慰霊碑がある静かな尾根だ
その尾根を先代の犬を伴って登った事があった
尾根を突き上げると 最後に小屋裏に生えている木の根元付近にあった犬小屋裏に出た
あの時の事は今でも忘れない
パルくんが違ういぬになっていたのだから、、、



この日の事もきっといつまでも忘れないだろう

いつも蛭まで行こうと言いながら毎回姫次までで時間切れ
いつもそれの繰り返しだったからね
なんべん言っただろうか ”きょうは蛭まで行くから” と

このいぬと共に蛭までいった
だからなんだという事はないが嬉しかった事だけは否定のしようもない



登ったらくだる

いつも思うがくだるというのは実にあっけない
でも良い事もあって
息があがらないから景色を楽しむ余裕がうんと生まれる

しかし いぬは此方が景色をのんびり眺めていようとも
そんな事はかまい無しにグングン降って行ってしまう
行ってしまったとしても それでも 稜線の端に見えるいぬの姿もなかなかだ
だからいぬが好きなだけ遠くへ行ってしまってもいいと思っている
でも 見える範囲にいてくれるのが条件だけどね



ひょいひょい降っちゃういぬが一緒なので
あっという間に地蔵平へと戻る

ここでまたしてもいぬが水を催促してくる

なので ハイハイとワタシは素直に水入れを用意してやる
しかし いぬは水なんかよりもワタシが飲んでいるスポーツドリンクをよこせと
にくたらしい横目でなんども訴えてくる
だから 仕方なくそれを注いでやる
するといぬは一気にそれを飲み干すのである

毎度のことなので 今度からはデカイボトルで持ってこよう
いぬに飲み物を横取りされる度にいつもそう思うのだけれど
商店で買い物をする時になると完全にそれを失念してしまうのである



姫次まで降りてくると
完全に雪がキュッキュッからザクザクに変わった
靴下の湿り具合から
防水の切れた靴にはつらい季節がそこまでやってきているのが分かる
新しい靴を買うか それとももうひと夏このまま靴下でごまかして過ごすか
そんな事を考えながら いぬの足を見ては羨ましく思うのであった



そんな懐具合が気になる春の終わりに

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