27 Feb 2017

富士を眺めに



結局のところ姫次から富士は見えなかった



青根の集落らへんで国道を外れ林道へと入る
しかし 期待していたような雪景色はおろか 痕跡さえも見当たらない
それどころか 狭い林道の隅へと舵を切っても凍結の気配すら無く
ぼくらを乗せた4x4は 持てる能力を発揮する機会も与えられず
すんなりと車止めへと、、、



杉の植林帯を抜けるかという地点で
喉が渇いたと訴える犬の視線に負けてはやくも小休止



再び歩きはじめると いくらもしないで植林の暗い林を抜けた

毎度の事ではあるけれど
この暗黒の杉檜地帯を抜けるまでのあの重苦しい心持は
そこを いままさに抜けようかという
ある種の折り返し地点ともいえる そんな箇所まで来たとたんにがらりと変わる
晴れ晴れとした そんなココロへと

ココロが晴れると更に調子に乗って

 "やっぱり釜立の尾根もなかなかいいな"

と連れが犬にもかかわらず 声にだして同意を求めるのだ

ヒトというのは全くもって気分次第の生き物なのである



しかし 実際には 尾根の上に立ったとはいえ
右左がすっきり見渡せるような所までは来ていない
西のほうがほんの少しだけ開けて
小屋戸沢の沢音が谿底から聞こえてきただけに過ぎないのだ

これってのは
偽のピークにがっかりさせられたような
そんなちょっと損をしたような そんな気分にさせられた時のそれと同じだ



何度も何度も来ているんだから
此処がどこら辺りで そしてその先を曲がれば、、、
なんて事くらいは目をつむっていたって分かるはずなのにね
でも 何処かの偽ピークしかり
いつもこの辺りに差し掛かると ”尾根へ抜けたぞ” とそう思い込んでしまうんだな

がっかりなんだよ ホントに

まあ そんな時は素直にルックサックを下し 腰を据えて休憩するに限る
いぬだってそう望んでいるはずだから そうしない理由もない
聞いて確かめた訳じゃないけど そうに決まってるよ




勘違いか思い違いでがっかりしていた割には
それからいくらもしないで意外にあっけなく東海自然歩道に飛び出すんだな

ここらの道は 南側が低い笹だから見晴らしはがいい
そして此処からしばらくはそんな気持ちの良い道が続く
但し 木の渡し板みたいなアレには 正直閉口させられるけどね



姫次の少し手前の平らな道も好きな場所だね

その区間というのは 実にあっけなくて(短いってこと)
ホントにあっという間に終わっちゃうんだけど
それでもそこが近づいてくると いよいよあそこだって思うんだな

そうそう そこだけは尾根に突き出る時みたいに思い違いとかじゃなくて
ちゃんとした記憶の元 そろそろだぞって
心構えっていうのかな そんなものが出来上がっているんだよ

平らだし 息も整っているから余裕があるんだろうね

頭の中で
平らな道が左に緩く曲がっていって
そして今度は
またいくらか右に修正する
でそこを過ぎると
こんどはその柔らかな土の道が真っ直ぐになりはじめる
そしてさいごは、、少し下り気味に、、、



顔を上げると 辻にたっている表示板が目に入ってくる

そうそう そこが姫次なんだ



この日は空が霞んでいたから
きりっとした眺めは望めないことは覚悟していたけど
それでも うっすらと雪のかぶった富士を前にして昼飯が食えるんじゃないかと
少しはそんな期待があったけど
どうにも富士の方向だけは 動こうとしない薄雲がいつまでも居座っていた



いつか来た時にあった石を重しにして
あの時と同じように飯を炊いた



米は車止めを出る時に 準備よろしく水に浸しておいたから
ここに着いて直ぐに火にかけた

それでも飯が炊き上がるまでには二、三十分はあるので 暇つぶしに犬と遊ぶ
でも 犬は直ぐに一人勝手にやりたい事を始めるので
いくらも経たないで付き人は暇になる
要は相手にしてもらえなくなる そう暇を言い渡されるって事だ
まあ寒くも無いし 
のんびりベンチに腰掛けて ポットから立ち昇る湯気を眺めてるのも悪く無いので
それはそれで気にする事でもないが 本音を言えば少し寂しいかな



炊きたての飯に 途中のコンビニで買い集めた惣菜を盛って昼飯の出来上がり

もちろん犬は遊びを切り上げてワタシの傍へ戻っている



そして犬は当然のように炊きたての飯とイワシのつみれを要求し
見事に食い散らかす





袖平へ向かった

青根に車を止めたので
風巻から神ノ川へ降る事は出来ないが それでもなんとなく袖平へ向かった

確か一度か二度か
よく覚えていないけど袖平の山頂へ行ったことがある

普段は行かないんだよ
そこの通り道にあるベンチで
地蔵平の方を眺めながら休んだ事は数え切れないくらいあるんだけどね

でも行った事があるのは確かだ
なんどもいうけど一度か二度ね
ただそこからの眺めはあまり覚えていないんだな
というよりまったく覚えていないんだよね

あの日改めてこそから西の方を眺めた あんな眺めだったんだね

富士は相変わらず雲の中で
わずかに見えるのは裾野のみだったけど
もっと遠くに 
三つ峠の向こうに雪に覆われた北岳やらが綺麗に見えた
でも それでもあそこからの眺めは思い出せなかったけどね

ただ山頂から先にある朽ち果てた表示板には見覚えがあって
そうだ此処から降れば車へ戻れるなって、、、



袖平の北側を下る

少し下ると眺望が消える
まったくの藪ではないが 梢越に見える眺めは立ち止まるほどのものではない

やがて尾根が錯綜し始めて最後は暗い植林の林になる
要は出発地へと近づいているという事なので当たり前と言えば当たり前だ



遠くから聞こえていた猟銃の音が段々と大きくなって来た
谿間で発射しているのが良く判る

犬は構わず谿寄りの近道を目指しグングン降って行く
すると嫌なタイミングでさらに一発 轟音が響く
さすがに限界と犬を慌てて繋ぐ

犬に引かれながら沢を渡ったところで猟師が此方を見ていた



冬枯れの藪山は楽しいけれど
銃撃にはくれぐれもご注意を

2016/11/29 姫次から袖平を降って

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